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糖質制限についての誤解

以前の職場にちょっと用があって半年ぶりに訪問してみると、俺の激ヤセぶりにみな目を見張る。当然何故痩せたの?という質問になるわけだが、糖質制限について説明すると「あー、無理無理」と詳しく尋ねようとはしなくなる。無理もない。俺自身、もしも親父がアルツハイマーになってなくて、介護に苦しめられて、父の轍は踏むまいと決意してなければ大好きな麺類やコーンチョコを諦めようとは思わなかっただろうから。
そして大学の後輩の追いコンに出席しても同じ反応。激ヤセぶりに驚かれ、理由とやり方を説明してもみんな「えー?そんなの無理っす」で終わり。
俺自身、糖質制限を始める直前、一年前のブログエントリーでは「一人暮らしで自炊しない場合、米や小麦から遠ざかるのはかなり難しい」などと述べているわけだから、そもそも何かの動機がなければ穀物を取らなくなるのは無理難題なのだろう。

しかし、色々と誤解があるので書いておこうと思う。


米などの穀物を食べないと力が出ないんじゃ?
そんなことはない。元々人類は穀物なんか食べない環境下で進化してきた。穀物を食べるには火が必要。穀物のデンプンは加熱しなければ人間には消化吸収できない。火を使えるようになったのは進化史的に言えばつい最近のこと。ましてや農業や貯蔵を発明するまでは、穀物とは実りの秋にしか食べられなかったシロモノだ。そんなものを主食にしてたら人類はとっくの昔に絶滅してる。
人間にとって必要な栄養素は蛋白質と脂質。糖質(炭水化物)は食べなくても大丈夫。

脳は糖分を摂らないと働かないのでは?
糖分を摂るとむしろ能率が下がる。なぜなら糖分を摂取すると血糖値が上がるのだが、血糖値は上がり過ぎるとそれを抑制するためのインシュリンが分泌される。インシュリンは血糖値を下げすぎる傾向があり、そのために食後1時間程度で軽い低血糖状態に陥り、眠気を催してしまうからだ。実は脳は特に糖質を必要とはしていない。脂肪を分解することで生成されるケトン体と呼ばれるエネルギーになる物質を消費して活動できる。脳が糖分を必要だとする根拠になっている論文は随分昔のもので、問題があるらしい。
私の実体験としては糖質制限を行っていると、食後の眠気もなくなり集中力も減退しない。職業訓練を受けていた最中、材料力学の課題が有り、その中で数学を用いるのだけど、私は数学が最も苦手。高校時代は赤点だった。その数学を使う強度計算を一ヶ月の間、朝から晩まで延々とこなし続けてたがその際に眠気に誘われることはなかった。

朝飯を食べないと却って太るのでは?
そんなことはない。朝飯など食べる必要がない。食事は労働の結果というのが動物の基本だろう。朝起きて何もしてないのに飯を食うなどその基本から外れてる。ちなみに米国で朝食が広まったのは発明王エジソンがトースターを売りたかったために行った宣伝の結果。日本も江戸時代中期頃までは1日2食だったらしい。 俺は1日2食で全然問題無く活動出来てるし、能率も下がらなかった。もちろん体重も減り続けた。
朝食を摂らないメリットとしては、消化器官を休息させられること。朝食を食べてしまうと一日中消化器官が動き続ける。ましてやデンプンを多く含む炭水化物は消化が悪く(腹持ちが良いと言われる所以である)、胃腸に負担をかけ続けることになる。パンとか糖質の多い朝食を食べると当然、食後の眠気に襲われるので午前中の能率が下がる。

日本人だったら米を食べるべきでは?
日本人が白米をもりもり食べるようになったのはつい最近のこと。大正時代になるまではアワヒエなどの雑穀を主食としてたし、食べれたとしても精製度の低い玄米。帝国陸軍への勧誘文句が「白米が食える」だったぐらい、一般の人は白米が食えなかった。朝鮮併合によって彼の地の作物を収奪することによって漸く全国的な米の供給体制が整ったのである。 ちなみに、雑穀や玄米は精製度が低いため、摂食の際、糠などの食物繊維を同時に摂取することになる。食物繊維は糖の吸収を穏やかにするから雑穀や玄米を食べると若干糖質制限気味になる。

猿とかは果物を食べているから糖を摂取するのは自然なことだろ?
自然の状態で季節にかかわりなく果物を食べられる地域は限られている。 人類が出アフリカするまで果物は特定の季節にしか手に入らなかった。第一、果物は主食にできるほど実ってはくれない。そんなのを主食にしてたら餓死してしまう。さらに今の果物は人類の絶えざる品種改良によって糖度がかなり増している。 実りの秋に糖分を含む果物を摂取して脂肪に変え、食物が乏しい冬を乗り切るためのエネルギー&防寒に役立てる、そして植物側は種をばら撒いてくれる種族を滅びないように活かしてやるという構図は理にかなっている。だが一年中その構図を成り立たせる必要は特に植物の側には無いはず。

人類は糖が好き、ということは糖を必要とするようにできているのでは?
本来、自然環境では糖は高エネルギーだけれど手に入りにくいものなのである。手に入りにくい高エネルギーだからこそ摂取のチャンスを逃さないよう、動機付けが強くなっているし、消費しきれなかった分を脂肪に変換して蓄える仕組みが備わっているのだ。常時、簡単に手に入るものなら蓄える仕組みなど不要だったはずだ。 現代では糖が簡単に、そして過剰に手に入りすぎてしまい、そのため肥満や高血圧、糖尿病などの不自然な病に冒されてしまうのである。