Look on the Bright Side of Things

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V for Vendetta

梅田ブルク7のレイトショーで見てきた。GWにもかかわらず、私はカレンダー通りに平日勤務だった。ちくしょう。
見終わった直後の、記憶が確かな状態で感想を書くことにしたのは、この映画がどうも良作らしいのだけど、確信が持てないという妙な感覚を味わっているからだ。それはこの映画に限ったことではなくて、素晴らしいとの前評判で読んだハヤカワSF文庫の短編集「あなたの人生の物語」が、いい作品なんだろうけど、腑に落ちないという、同じ感覚を得ている。近頃、「これはクソだ!」と断言出来なくなっている自分の精神状態に不安を感じているのである。後で取り繕うことの無いよう、そういう精神状態を記録しておきたいのである。
まず、ここが気に入ったという点。

…てな具合。なんか熱く語れないのである。しかしここがダメだということは熱く語れちゃうのだ。

全体主義国家が甘い。
バーで不平を語れる全体主義国家。なんて自由なんでしょ。ンなの甘い甘い。本物は自分の子どもが監視役&密告者だったりするんだぜ。
独裁者が馬鹿
本物の独裁者はもっと猫なで声で、民衆に愛されてるから始末が悪いんだよ。あんなの怖くも何ともない。
民衆が決起しすぎ
隣の奴が裏切るかわかんないからこそ、全体主義は成立する訳なんだが。そのための連帯責任とか隣組なのよね。

まぁ、倒すべき相手が我々のよく知るリアル全体主義国家に比べて大したこと無いのと、あんまりにも"V"のやることなすことが巧く行き過ぎなので、復讐劇とみても革命劇とみても解放劇とみてもカタルシスはない。寓話として観る以外に価値を見いだせない。
しかし、私の勘はこの映画が良作であると告げている。良作なんだけど惜しい一作と評価するべきだと勘がささやく。"V"のキャラクターは実に魅力的だし、ナタリー・ポートマンもいい役をしている。筋立てにも破綻はあまり観られない。だけど…。
Wikipedia掲載の原作紹介ページを見る限り、かなり忠実な映画化のようだが、もっと換骨奪胎して、エヴィーとフィンチ警視をひとまとめにしてしまった方が、物語として良かったのでは。この映画で感情移入すべき対象は"V"やエヴィーではなく、フィンチ警視であるべきだと思う。フィンチ警視がもっと"V"とからんで悩めばもっと面白かった。
うーん、やっぱなんかもやもやするなぁ。「マトリックス・レボリューションズ」の時と同じもやもやだ、これ。ウォシャウスキー兄の性転換が影響しているとは思いたくないが…。レズネタは「バウンド」の頃からだしな。