Look on the Bright Side of Things

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神秘のミジンコ

小学生の頃、顕微鏡に嵌ったことがある。学校の理科室で顕微鏡を借り、手当たり次第に色んなものを覗いた。肉眼では見えない微細な世界を覗くのは、世界の別の側面を覗くような気がして、とても興味をそそられた。家でも覗きたかったので親に購入をねだったが、私が飽きっぽいのを知ってる親に断固として拒否されてしまった。しかし哀れに思ったのか、その代わりとして顕微鏡写真の図鑑を与えてくれた。これが実に面白く、しばらくの間、片時も手放さない愛読書となった。当時は内容をほとんど暗唱できたぐらいだ。
その図鑑の表紙を飾っていたのがミジンコ。ミジンコとの最初の出会いは手塚治虫の「火の鳥鳳凰編」だった。仏師が夢で見た転生の一形態として登場していた。当時は単なる微生物という認識だったけれども、図鑑で見たミジンコはほぼ透明で、こんなに小さな生きものなのに心臓や消化器官を備えているのがとても神秘的だった。
そのころから微生物には感心があるのだけど、意外と微生物をテーマとした書籍を本屋で見かけることは少ない。専門書ならたくさんあるようだが、一般向けの内容の本はなかなか見られない。食物連鎖に見られるように、小さな生きものこそが世界を支えているのだから、彼らについて知ることはとても重要だと思うのだが。
そんななかでこの間、岩波ジュニア新書から「ミジンコはすごい!」という本が出た。書店で見つけた時、思わず手にとってそのままレジに直行してしまった。ジュニア新書と銘打っているだけに、高校生当たりを対象とした内容だが、大人が読んでも充分面白い。
意外だったのは、ミジンコが湖沼の透明度向上に役立つこと。水の透明度を低くしているのは富栄養によって植物プランクトンが大量発生しているから。なので、植物プランクトンを食べるミジンコを増やせば、植物プランクトンの数が減って、水の透明度が上がるのだそうだ。ところが、ミジンコは小魚の大好物なので、小魚が居るところでは捕食圧によって、ミジンコは増えない。したがって、魚食魚を放ち、小魚の数を減らしてやれば、ミジンコも増え、植物プランクトンが減って、水の透明度は上がる。ミジンコ様々である。
また、ミジンコは可能な限り捕食者に食われないよう、捕食者が居るところでは頭をとがらせたり、日中は酸素濃度の低い、深いところに潜って魚などをやり過ごし、夜になって水面近くに上がって植物プランクトンを食べるようにしている、など、健気に頑張っている姿が紹介されている。

学研の図鑑 38 顕微鏡観察 ミジンコはすごい! (岩波ジュニア新書)