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短編集2編

高校生の頃から早川海外SF文庫ファン。一日一冊の割合で読破していったこともある。短編よりは長編が好みで、一番最近に読んだ長編はロバート・J・ソウヤー「ホミニッド」と「ヒューマン」だ。悪くはなかったが、地味な展開&文明批判が面白くなくて、解決編の「ハイブリッド」は読んでいない。
できればググッと来る長編が読みたいのだけれど、最近はSFが振るわないのか刊行ペースが落ちている。仕方ないからネットで評価の高かった短編集のテッド・チャンあなたの人生の物語」と、マイケル・スワンウィック「グリュフォンの卵」を読んだ。
あなたの人生の物語」の方は、着想が素晴らしい。古代バビロニアで宇宙空間にまで伸びたバベルの塔(当然物理法則も当時知られていたものが適用されている)や、神や天使の降臨が実際に行われる世界、非線形言語を用いるエイリアンとのコンタクトによって非線形思考を身につけてしまった言語学者、などなど、読み始めると引き込まれてしまう。しかし、いずれの短編も広げすぎた風呂敷をまとめきれずにあっさりと終わるのが辛い。読み終わった後に、この後どうなるのだろうとかいう余韻もない。
対して「グリュフォンの卵」は実に良かった。いずれの話も背景世界の設定が緻密に行われているためか、長編化したものや続編を読みたくなるほどの広がりを持っている。そういった世界で遊ばせてくれた後に、きっちりオチも付けられ、ずっしりとした読後感と余韻が残る。

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF) グリュフォンの卵 (ハヤカワ文庫SF)