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本当は恐ろしい時間停止

お手軽なSF、漫画では時間停止ネタがちょこちょことある。ジョジョに出てくるザ・ワールドやパタリロの「タイムワーッ プじゃない」とか、009の加速装置も時間停止ネタに近い。
もちろんありえないことではあるが、それらの描写では停止時間内を動けるキャラクターに以下のような法則が働いている。

  1. 物を観ることが出来る。また物体の変化情報も視覚に反映される
  2. 音も鳴ることが多い
  3. 呼吸が出来る
  4. 停止している物体に干渉できる
  5. 空間内を移動できる
  6. 重力は働き続けている
  7. 停止中に動かされた物体に付いては、停止解除後、停止中の慣性を伴うことが多い
  8. 体温に付いては考慮されていない

上のことに関してちょっと考えてみた。

1.について、周囲が完全時間停止しているのであれば、光子も静止しているため、光がもたらす情報も停止するはずで、網膜を刺激する光が入ってこないから見ることができないはずなのだが、どのキャラクターもモノを見ることが出来ている。つまり完全停止しているわけではないのかもしれない。ついでながらブラウン管モニタの画面は残像を利用しているわけだからハッキリ見えなくなるはず。蛍光灯も実際には点滅しているため、もし、何らかの方法によって見えているのであれば消えているように見えるものがあるはず。

2.について、音が鳴るということは空気が振動しており、その振動波が鼓膜を揺らしている訳である。つまり周囲の空気の時間は停止していない。音速は地上で約340m/秒。これも完全停止しているのであれば、音が聞こえるはずがない。完全停止していないのであったとしても、音が発生してから鼓膜に届くまで、少し遅れるはず。

3.について、空気を吸うためにはその空気が動いてくれなければならない。また、吸った分の空気がその周囲から流入しないと、吸い続けることが出来なくなる。吐く場合も同じで、吐いた空気が拡散していかないと、鼻や口の周りの二酸化炭素濃度が上がって呼吸不全を起こす。

4.について、時間が停止している物体に干渉できるとするためには、その能力の前提として任意の物体のひと固まりが停止系から非停止系に取り込まれるものとしなければならない。慣性も無視される。加速装置の場合、むやみに物体に干渉すると、その物体に猛烈な加速が発生して大事故が発生しかねない。009自体も耐熱仕様だった記憶が。

5.について、停止時間内を動けるということは、停止系からみると光速を越えていることになる。つまり物理法則を破っている。そんなことはお構いなしに非停止系キャラクター自体は通常の物理法則を非停止系に持ち込んでいる。主観上の光速をさらに越えるとか、主観上の慣性を無視するような描写は見られない。身体は一斉に非停止系にとりこまれるようで、体内の化学反応が異常をきたすような描写も見られない。体の一部分(あるいは複数部分)が時間停止に陥るようなこともないようだ。

6.について、時間を停止させても、重力は非停止系キャラクターに働き続ける。停止系は落下物があったとしても空中に停止する。重力は非停止系に対して働き続ける。つまり重力は非停止系キャラクターに必要な分だけ情報伝達が行われ続ける。停止系にいたときの慣性は無視される。もし、非停止系に慣性が働き続けているとまずいことになる。我々は自転・公転している地球や太陽、銀河系などとともに動き続けてるので、周囲が停止すると、都合よく慣性がキャンセルされない限り、非停止系キャラクターは猛烈な勢いでどこかに吹っ飛んで(あるいはメリ込んで)いくことになるのではないか。

7.について、非停止系キャラクターが動かした物体は停止が解除されると、非停止系の運動情報を持ったまま停止系に戻る。慣性が復活するわけだが、その情報をどうやって停止系に持ち込むのかは定かでない。

8.について、我々は常に周囲の空気や物体と熱の交換を行なっている。熱を外部に排泄できないと体温が上がり続ける。汗をかくにしても汗が蒸発して熱を奪わないと意味が無い。非停止系においては停止空間内の物体を自分にとって都合のいいように非停止系に取り込めるようで、そのへんの問題が発生しないのだろう。

つまり、安全かつ快適に時間を止めるためには上記のようなことがとても都合よく解決または行われていなければならないわけで、例えば光も完全停止している場合、ものが全く見えなくなるし、停止中の物体に干渉できなければ呼吸が出来ないし、うまいこと慣性が無視されなければ停止した瞬間に地球の自転速度+公転速度などの慣性でどこかへ吹っ飛んでいくことだろう。
時間停止はかくも危険なのである(ほんとか?)。