Look on the Bright Side of Things

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どん底

しばらく前に出だしだけ観て、興味が湧かず放置していた「どん底」を観る。「どですかでん」を観終わって、その元ネタともいえる内容に興味が湧いたのだ。
どですかでん」と違うのは、何もなくともここには人の紐帯が、か細いながらも存在すること。誰1人救われないのは一緒なのだが、すくなくとも仲間に対する不当な扱いに憤り、助け出そうとするだけの人間性は失われていない。一緒になって歌い踊る仲間意識もある。だからといって、彼らの前途にはなんの光明もない。決別して出て行くこともできない。だからこそ「どん底」なのだ。
物語を動かしていく左ト全の名演が光る。中村鴈治郎演ずる大家の六兵衛との対峙には凄みを感じた。三井弘次、山田五十鈴藤原釜足東野英治郎らも見事に存在感を見せている。三船は少し上滑りに思える。もう少し軽薄な役者を充てても良かったんじゃないだろうか。あの吹き溜まりに収まるような面魂ではないのだ。役不足だったように思う。
毎度のことながら、セットもまた素晴らしい。よくもあそこまで汚せたものだ。