Look on the Bright Side of Things

Anderson's Blog - since 2005

忘れ物には寛容な時代

昔から慌て者で気が短かった私は、準備もそこそこに走りだしてあとで忘れ物に気づいて酷い目に遭う、ということを繰り返してきた。
社会人になってもなかなかその癖が治らず、出張の際に大事なブツを忘れたり、待ち合わせ場所・時間を間違えたり、相手先担当者の名前を忘れたり、急に連絡を取らなければならないときに連絡先が分からなくなって困る、ということを失敗をよくしていた。
ところが最近は、それらのことで特に困ることが無くなった。私の場合は仕事の性質上、物を持ち歩くことが少なく、巨大なデータでもなければすぐにネット経由で取り寄せられる。渡すべきマニュアルもPDFで取り寄せてそのまま渡したほうが喜ばれるし、あらかじめメールで送ってたりする。よく使う重要なデータはネット上のストレージに保管してあるから、ネットさえ繋がっていればどこからでも取り出せる。緊急時には漫喫を使うこともできる。
待ち合わせも、昔は駅のどの出口で待ち合わせるか丁寧に決めていたが、今は携帯でやりとりするから、アバウトに決めるだけで済む。連絡先は携帯にさえ入っていればOKだし、もし判らなければ相手先HPを見てそこに載ってる電話番号で連絡もできる。初めて伺う出先だと地図を忘れたらかなり困ってたけど、今や携帯版GoogleMapで道順まで教えてくれる。ややこしい電車の乗換もその場で即座に調べられる。
気を配っておくべき点が減り、杜撰になった反面、本筋に集中できるしフットワークも軽くなったように思う。個人に直接連絡が取れるため、レスポンスが早いし、楽である。
学生時代、部活の行事ごとで部員全員で待ち合わせをする際、何らかの事情で遅れてしまった場合、お互いに連絡を付ける方法がなく、自宅もしくは目的地に電話で伝言を残しておくことぐらいしか出来なかった。そういう待ち合わせ場所になりやすい駅とかには伝言板が置いてあったものだ。
集合で遅れたものが出た場合、昔は10分待ったら出発とか、遅れることを見越して指定時刻の30分前に集合という決め事があった。今は地下鉄でもなければ連絡がとれるため、先に出発するので直接現地に向かえ、とか、乗り換え場所で待つとか色々指示が出せるのが有り難い。
しかし、便利になってるせいで、携帯がマナーモードになってて気づかないとか、連絡がつかないと逆にイライラさせられる。鳴らしてるんだから出ろよと怒ったりする。不在ということがありうる固定電話の時代にはなかった感覚である。居留守が使えないのが携帯の困りどころである。
昔の黒電話なら留守番電話機能もないから、本当に不在なら鳴っていたことすら判らない。つまり、何らかの事情のせいにして気づかなかったことに出来て都合が良かったのだが、留守電の導入以降、鳴らしているのに出ないというのは出たくないという意志が明確にされてしまう。発着信先の記録が残る携帯は特に言い訳が効かない。星新一の短編みたいに、代理でうまく誤魔化してくれるエージェントAIができたら、導入する人は決して少なくないことだろう。