Look on the Bright Side of Things

Anderson's Blog - since 2005

得物を使うコツ

twitterで少し書いてみたのだが、140文字では足りないためこちらでメモしておく。

得物を握らぬこと
まずは得物の執りかた。片手で軽く執ってダラリと提げる。その時の手のひらと得物の関係、力の抜き具合(これらを 手のうち という)を一切変えないで構えること。構える際に執り直してはならない。提げたときには肘が伸び、親指と人差指側の力が抜けているはず。つまり腕の屈筋側に力が入っていない。それが一番ベストな執り方。
屈筋側に力が入ると、肘が曲がり手首も堅くなる。得物を振ったときに伸びがなくなり、縮こまってしまう。それを補おうとして腰が引けて姿勢が悪くなる。
つまり獲物を執る場合は握ってはならない。すっぽ抜ける直前まで柔らかく包むようにして執る。わざわざ「執る」という言葉を使っているのはそのため。得物を「持つ」と言ってしまうと、固定観念からどうしても握ってしまう。
得物を執って進退するのは、非日常的動作であるべきで、従来の立ち居振る舞いの延長線上に在ってはならない。それまで経てきた生活動作とは全く違うものとして、新しく習得し直す必要がある。でなければ技の世界には入れない。
前記のように得物を執れば、日常的な立ち居振る舞いでは使えなくなる。姿勢も心の持ちようも新しく学び直すことを強いる執り方なのである。
握らず、持たず、で得物を繰り出そうとすると、それまで使っていた腕力は使えなくなる。少しでも腕力を使おうとすると、とたんに握ってしまい、持ってしまい、ダラリと提げたときの手のうちが破綻する。よって、腕力以外の駆動源を新たに見出さなければならない。

手ではなく肘を操作する
初心のうちは肘から先はないものと念じ、肘を操作するつもりで得物を繰り出すと良い。肘を使おうとすると肩が動き始める。それほどまでに、普段の動きの延長線上で肩は動こうとしないものなのだ。普段動かない肩を動かそうとすることによって、ようやく背筋(広背筋)が目覚め始める。肩を動かすことは畢竟、広背筋を操作することにつながるのである。
例えば木刀や竹刀の千本振りを行ったとする。その後で、腕に筋肉痛を覚えるようでは話にならない。広背筋、そして背中の中央部に筋肉痛を覚えるようになれば上出来であろう。得物と腕を背筋で引き上げ、振り下ろすことが第一目標である。
次に、肘と腰骨の位置をなるべくシンクロさせる。右腰が出るなら右肘も出る。左肘が下がるなら左腰も下がる。そうすることによって、得物を体全体で使うことができるようになる。この場合も手のうちを変えない。手のうちが変わると肘と腰の関係が破綻して体の力が得物に乗らなくなる。

目線を上げる
次に重要なのが体軸の確保。体軸がふらついていては手のうちも広背筋も、腰骨もなんにも機能しなくなる。体軸の確保はひとえに足腰の強さと目線にある。
体軸は可能な限り中立であるべきで、前傾や後傾してはならない。前傾するととたんに得物が重く感じるようになる。なぜなら腰から得物が遠くなればなるほど、得物だけでなく腕や頭を支える筋力が必要になるからである。
後傾すると腕の動きが胸で遮られてしまい、満足な動作が出来なくなる。また、敵との間合いが遠くなってしまい、利がない。
難しく考える必要はなく、目線、目のつけどころだけで姿勢は改善、最適化される。下から見上げるような目をしていれば前傾している証拠。水平よりも少し上、遠くの山を見るような位置に首を調整すればいい。
人間の目は常に真ん中を見るように出来ている。上下左右に眼球を動かし、どこかで固定し続けるとすぐに疲れる。なので首が自然と視線の方向に追随して眼球が疲れないようにしようとする。なので、遠くの山を見るような心持ちで視線を送ると、首が勝手に適切な位置に調節され、続いて全身の姿勢もそれに最適化される。人間の頭部は重いから、首の位置に応じて可能な限り身体が楽になる姿勢になろうとするのだ。その楽な姿勢こそ、得物を用いるのに適しているのである。
しかし、これらは本来、自然な姿勢ではない。人体は、闘争の際には前傾したほうが防御力が増すような構造となっている。人間の構造は攻撃よりは防御に適しているし、本能もそれを志向しているようである。故に意識して訓練しなければ、前述のような姿勢にはなれない。

足ではなく腰を使って移動する
得物を執って進退する際、足捌きを行わなければならないが、初学のうちはどうしても足を動かすと腰が遅れてしまい、結果、姿勢が崩れて手打ちになってしまう。後退する際は特にこれが顕著となり、足が下がっても上体が残ってしまい、相手との間合いが苦しくなり、後が続かなくなる事が多い。
大腿骨の付け根の上、腰骨の出っ張りを意識して、前進する際は腰骨を相手にぶつけに行く、後退の際は腰骨を可能な限り相手から遠ざけるようにすれば、足は勝手に動く。この際に重要なのが、動く足とは反対側の腰骨を相手に向けるような意識で留めておくこと。右足を動かすのであれば右腰骨が相手に向かうのと同じく、左腰骨も相手に向かおうとすること。実際には腰骨はそういうふうには動かないのだけれど、そういう意識で身体を制御すると、膝が必要以上に開かなくなり、身体に伴う体軸のブレが最小限に留められる。