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三国志 Three Kingdoms 43、44

43巻から最終章である危急存亡編へ。司馬懿発案の5路による蜀攻略戦が呉の裏切りにより瓦解したために、魏帝曹丕は呉を討たんとし、濡須口の戦いが起こり、魏は大敗して撤退。傷心の曹丕は間もなく世を去る。享年40歳。幼少より肺を病んでいたが世継ぎから外されるのを恐れ、父王曹操にも隠し続けていたという設定。
曹叡が新たに魏帝を継ぎ、司馬懿はその才知を警戒され、閑職に追いやられる。その間に南方を平定した諸葛亮は出師の表を呈し、漢中を越えて魏へ侵攻、北伐が開始される。破竹の勢いで魏領を略取し(夏侯楙の敗北と姜維の降伏は魏帝曹叡への報告で済まされる)、王朗を口舌で死に至らしめて魏軍を大いに破り、孟達が蜀に寝返って魏都洛陽を攻める手筈までつけられ、諸葛亮は大いに満足する。途中魏延との不仲がしばしば描かれる。
ここにいたって司馬懿が用いられ、諸葛亮に当たることになる。司馬懿の才知を警戒する諸葛亮だったが、あっさりと孟達を討ち取られ、信頼していた馬謖の愚行により街亭を失って全軍撤退の憂き目に合う。諸葛亮も危険に晒されるが空城の計で司馬懿を後退させて命を取り留める。司馬懿はあまりの手柄を挙げたことにより更に警戒されて閑職に追いやられる。
その間、石亭の戦いで曹休が破れるなど魏軍は振るわず、諸葛亮が第二次北伐を開始するにいたって、ようやく司馬懿が参謀として召しだされるが、病を理由にこれを受けず、かわりにカク昭を用いることを魏帝に勧める。手柄を曹真に奪われるのが嫌だったのである。


北伐の見どころの一つである姜維との出会いがばっさりオミット。諸葛亮のメイクがやつれた様子を表してるのをはじめ、登場人物が全員精彩に欠ける。張飛のようなコメディリリーフがいないので余計に話が暗くなる。
王朗を憤死させる諸葛亮の舌鋒だが、やり取りが簡略化され、いきなり王朗が血を吹いて落馬してしまうので些か物足りない。
泣いて馬謖を斬るくだりで、諸葛亮が悲嘆しつつ処刑を命じる軍令の符を投げつける描写は良かった。神仙のように描かれる演義での諸葛亮よりも、こういう人間味を出したほうが受けるだろう。
三国志演義の物語構造的に、蜀を担う諸葛亮がその才知を縦横に振るう南蛮攻略はやはり欠かせない。南蛮攻略で魅力を際だたせるからこそその神智を持ってしても苦戦する北伐の悲壮感が増すのだ。その南蛮攻略をこのシリーズでは全く描かない。予算と尺が足りなかったのだろうな。
諸葛亮の軍才についてはあれこれ言われているが、5度の北伐でいずれも軍を綺麗に撤退させている手腕は見事といえよう。引き際をよくわきまえているのは良将と言って良い。国力が倍以上の大国を相手によく戦ったと言える。