地下鉄の吊り広告で新潮文庫の新刊案内を見かけて即座に購入した、サイモン・シンの「宇宙創成」を読了。「暗号解読」もそうだったが、歴史的な流れとともに、初歩的知識を案内し、そこから現代に至るまでの道筋と、かかわる人たちの営みを織り交ぜて、全体像を語っていく手法には、ついつい引き込まれてしまう。
昔から宇宙論には興味があり、宇宙の大規模構造とかダークマター、グレートアトラクターとかいう単語に惹かれてしまう私としては、そこまで行き当たらずに話が終わってしまうのが少しさびしかった。
しかし、地球の直径と円周をかなり正確に算出した古代ギリシャのエラトステネスや、その大きさを元に月や太陽までの距離を測定したアリスタルコス、地動説に基づいて惑星軌道が楕円であることを証明したケプラーなどの逸話と思考の過程について書かれており、さらにガリレイ、アインシュタイン、ハッブル、ガモフ、ホイーラーなどなどの多くの天文学者、物理学者たちが、宇宙の真の姿を探ろうと苦闘する姿も描かれているのは満足だった。なぜかニュートンや量子力学についての取り扱いがそっけないのは些かガッカリである。
この本を読むまでは知らなかったけれども、今では常識の範疇にあるビッグバン宇宙論が市民権を得たのは私が生まれるほんの10年ほど前だったそうな。そのビッグバンモデルについても、インフレーションだの膜宇宙だの新しい概念を取り入れ、常に変化している。きっと永遠に探求は尽きないのだろう。
- 作者: サイモンシン,Simon Singh,青木薫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/01/28
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