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刀狩りと「七人の侍」

刀狩り―武器を封印した民衆 (岩波新書 新赤版 (965))を読む。豊臣秀吉の行った刀狩りや徳川幕政期の苗字帯刀特典によって、1580年以降武士以外の武器所持が禁じられていたかのように思っていたのだが、この本によればそれは誤りだという。実は所有自体が厳しく詮議されることは無く、武士以外の人々が脇差しを所持するのは当たり前だったそうだ。要は長刀の帯刀を禁じることによって、武士とそれ以外の身分を峻別しようとしたのが刀狩りの本旨だったという。
農村でも害獣駆除のための槍や弓、鉄砲は所持が認められていた。これは明治維新以降も同じ状態であって、例外を除く一切の武器所有を禁じられたのは米軍進駐後の話である。
もともと、上記刀狩りもその一環であった兵農分離が秀吉の手によって行われるまでは、戦国時代に於ける農民は兵士でもあった(だからこそ刀狩りが行われた)。したがって、黒澤明の「七人の侍」は設定からして無理があることになる。当時の農民は種の善し悪しが分かるだけでなく、刀や槍の善し悪しも、その使い方も熟知していたのだ。もっともそのことによって映画の価値がいささかも減じられはしない。ラストの雨中での激闘に匹敵するような緊張感は他の映画では未だ味わったことがない。この間BS2黒澤明特集で放送されていたものをREGZAで録画し、繰り返して観ているが飽きないのである。そのBS2黒澤明特集も残すところ10本程度。「蜘蛛之巣城」を見逃してしまったのは残念だった。

刀狩り―武器を封印した民衆 (岩波新書 新赤版 (965))

刀狩り―武器を封印した民衆 (岩波新書 新赤版 (965))