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当然勝てなかった太平洋戦争

昔々、小学生の頃、子ども向けの兵器図鑑に載っていた戦艦大和の図解と説明を見たりして、日本海軍の科学力は世界一ィィィ!と思っていた。もっとも大和なるものを知ったのは、宇宙戦艦ヤマトの方が先なので、その影響が強かったのかも知れない。
もちろん零戦は世界最高の戦闘機で、それら最強の海軍を有する日本が戦争に負けたのは、アメリカの物量作戦のせいだと信じ込んでいた。そしてそのターニングポイントとなったミッドウェー海戦は、たった1つのミスから生じた大敗北であって、それがなければもう少しいい戦いが出来たはずだとも思わされていた。
ところが様々な知識を知るにいたって、あれは物量とかそんなもんじゃなく、負けるべくして負けた戦争だということが中学生ぐらいの時に解ってきた。大体、補給線が伸びきり兵站が不安定で、情報は筒抜けで、しかもそのことに指導者が懸念を抱いていないのに勝てるはずなどありはしない。三国志を読めばわかりそうなもんだ。
エンジン性能が低いためにゼロ戦が防弾装備を持たず、脆弱な構造だったことや、無線やレーダーの開発に後れを取ったために、それらを有した米軍との戦いが不利になったこと、航空機万能時代に艦隊決戦主義を重視していたことなどは、あとになって知ったことだが、そんなことは些事に過ぎない。戦略の失敗を戦術で挽回することは不可能なのである。
ということで、あくまで些事に過ぎないことを詰め合わせた本、「やっぱり勝てない?太平洋戦争―日本海軍は本当に強かったのか」をお薦めする次第である。些事を取り上げて論じているとはいえ「神は細部に宿る」という言葉通り、やっぱり負けるべくして負けた戦争であり、敗因とされている「ささいなミス」は、それを育む土壌があってこそ生まれてきたのである。
野村克也曰く「負けに不思議の負け無し」なのだ。これは兵法の鉄則であり、それにもかかわらず、「勝てたかも知れない」などといってる奴に戦争を語る資格など無いのだ。

やっぱり勝てない?太平洋戦争―日本海軍は本当に強かったのか

やっぱり勝てない?太平洋戦争―日本海軍は本当に強かったのか