Look on the Bright Side of Things

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働きアリ

そろそろ夏が終わる。日中残暑は厳しいが、夜風の涼しさはすでに秋の近づきを伝えている。セミたちも力尽き、その骸にアリがたかっている。

むかし外回りの営業をしていた時、公園などで休憩した折に、ビスケットやあめ玉をアリたちの巣の近くにおいて、それに群がりだしたアリたちが行列をつくってぞろぞろと行進する様子を眺めるのが楽しかった。

アリほど興味をそそる昆虫はない。虫のくせに秩序だった行動をとり、大群に物をいわせて巨大な獲物を狩るかと思えば、キノコを育てて食料とし、蜜をくれるアブラムシを護衛する。さらには他のアリを捕らえて奴隷とし、食糧の確保や卵と幼虫の世話をさせる奴もいる。

アリを見ていると色んなことを考えさせられる。多くのアリでは女王アリ以外に産卵するものはいない。働きアリや兵隊アリたちは自分の子孫を残せないのだ。彼ら自身は種族を長らえさせるためだけに生まれ、死んでいく。

考えてみれば、生命は絶滅を回避するために様々な手段を開発してきた。生命は多くの場合、個体数を増やすことで生存の可能性をすこしでもあげようとしている。アリの場合は生殖アリが安全な巣の奥深くに陣取り、多数の働きアリを使役することで、外敵に遭遇する危険を減らすという手段をとった。
つまり、個体すべての生存については最初からあきらめているのだ。

アリにとって「命の尊さ」は生殖アリのみに言えることであって、働きアリはその限りではない。
彼らが一匹や二匹死んだところで、種の維持には影響がない。女王アリが次代の生殖アリを生むことが最重要なのであって、働きアリはそのためだけに活動している。

人間の場合も「かけがえのない命」と言うけれど、やはり個体すべての生存は当然の権利ではないのだよな。

アリリンク

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